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UMEのスパ天における実戦からチョイス、印象に残ったスパーを徹底解説!

電王戦タッグマッチ2014 1stROUND終了時点での雑感

コンピュータ将棋と人間がタッグを組んで戦う電王戦タッグマッチ2014。
昨日で1stROUNDのABブロックが終了。
Aブロックからは森下九段-ツツカナタッグ、Bブロックからは西尾六段-ponanzaタッグが勝ち上がり
前回王者の佐藤慎一四段-ponanza2013タッグ、初参戦の久保九段-習甦タッグを加えた
10月の決勝ROUNDへとコマを進めることとなった。


今回は去年から参加棋士も増え、
脳波の値を測定するヘッドマウントディスプレイや眼鏡型タブレット端末グーグルグラスなど
新しい機能も追加して、よりゴージャスなイベントとなった。
再来年からの本格棋戦化に向けて、ドワンゴ社の気合の入りようが伺える。
予選ラウンドが終わったこの段階で、ここまでの雑感をつらつらと書き連ねるとする。


まず目に付いたのは、やはり運営ミス。マルチアングルの脳波はさすがにいらない。
またタブレットとの連動が上手くいっていないのか、コンピュータ将棋のトラブルがかなり目立つ。
ツツカナが詰みを発見して評価値が0になるのは明らかにバグだし、
その後両コンピュータが使えなくなったのは、このイベントの意義を考えるにあまりに致命的なミスである。

しかしこれも概ね初日のAブロックのうちに問題が出切ったこともあり、
Bブロックではその問題の多くが修正されていた。
咄嗟にその場で24点法計算プログラムを作ったあたりを思い出すが、やはりドワンゴの問題修正能力は高く評価すべきだと思う。
ここはやはり新しい会社ならではの小回りの利き方だろうか。

とはいえこういった問題の影響もあって、将棋会のリビングレジェンド
加藤一二三九段の電王戦初参戦の場をいい形で迎えられなかったことは、視聴者としても痛恨の極みである。
中村六段-習甦タッグと初戦で当たったというのもあって、この本来大変貴重な場になるはずの対局が
なにやらあっさり終わってしまった、という感想しか残らなかった。

また、今回の形式として対局者がタブレット端末を操作して
自分でコンピュータ将棋に局面を読ませるという形になったのだが、これも個人的にはいまいち。
これは邪推になるが、やねうらおこと磯崎氏と佐藤紳哉六段を鉢合わせることを避けるための措置だったと予想しているのだが
この形式によって「開発者とのコンビで戦う」という、いい意味でのいわゆる「少年ジャンプ的」な熱が削がれてしまったように感じる。
特に前回は優勝した佐藤慎一四段-ponanzaタッグにおける山本一成氏のオペレーターとしての優秀さというのも
見ている限りかなり大きかったように思える。
コンピュータ将棋が人間を凌駕するとしても、そのコンピュータを作ったのもまた人間であり
どこまでいっても人間対人間の戦いなのである、という第2回電王戦第3局のPVの下り。あれは電王戦において一番のミソであると私は思うのだ。

将棋に関しては、森下九段-ツツカナタッグと西尾六段-ponanzaタッグは
素人目にみてもやはりブロック内で一番強かった。
昔実際にいわれたことだそうだが、終盤間違えない森下卓は本当にここまで強かった。
そして西尾六段とponanzaは相性が良すぎる。


丁度昨日がBブロックの対局だったので、まずは記憶が鮮明なこちらから振り返る。
やはり印象に残ったのは西尾六段-ponanzaタッグの強さである。
ともすれば暴れ馬のように強引な攻めで自らの首を絞めてしまいそうなponanzaであるが、
的確に手綱を絞ってコントロールし、そして見事にponanza流の圧巻の攻撃力を炸裂させた。
このponanzaの暴力、私は今将棋界全体を含めてもっとも好きな将棋である。

さらに驚いたのは、決勝の攻めの着火点となった△8六歩の仕掛け。
私はぱっと見で、アマチュア100万円チャレンジでよく見たponanzaの仕掛けだなぁと感じたのだが
この手は西尾六段が自力で指し、ponanzaは全く別の手を示していたとのこと(△3一玉とかだっけな)。
そしてこういう手から、ponanzaは幾多の強豪をメッタ斬りにしてきたのである。
その展開にponanzaを放り込むような西尾六段の絶妙な誘導、本当に彼は良くponanzaを知り尽くしていると感じた。
この後の応酬はあまりにも難解で、しかし恐らくコンピュータ将棋がプロ棋士を凌駕している部分が垣間見えた。

終盤の△5五金もどうやら人間には見えづらく、しかしなるほどという手。
こうやって将棋は勝つものか、ponanza流恐るべしと思ったのだが、これも西尾六段自身が考えた手とのこと。
それはさながらsaiが乗り移った進藤ヒカルのように、ponanzaという異質の強さが
西尾六段自身を一回りも二回りも大きくしているように感じた。
ponanza最大の持ち味である攻撃力を絶妙に発揮させた西尾六段には、一人のponanzaファンとして感謝である。


時系列は前後してAブロック。こちらも森下九段の強さが光った。
戦前の予想通りどうやらツツカナとの相性はよく、難解な序盤で的確にリードを重ね
終盤は抜き去っての磐石の勝利、とここで話が終わらないのはご覧になった皆さんであればご存知のところ。

決勝は詰みを読みきった直後ツツカナの点数が0に。森下ツツカナタッグの初戦でも同様の動作があったので
なんらかのトラブル含みなのか仕様なのかいまいちわからなかったが、
結果的には森下九段がツツカナのバグと勘違いし、詰みを逃してしまう。

説明を聞くに、△9五香で4000点オーバーの点数がありこれで勝ちなら、と指したが
次の応手が▲9七桂と表示され、これはバグったと愕然として
詰みを追わずに手を戻さざるを得なくなった、とのこと。
これは森下九段のミスと、ツツカナが詰み発見時に0表示になる仕様orバグが重なったために起こったことである。

コンピュータは詰みを発見したら、詰み手順は全て同一とみなし区別しない
本譜はやはり△9五香から詰みがどうやらあり、清算して8七から角を打つような手順でちゃんと詰むらしい。

感想戦によると△9五香▲9七歩△8七角▲8六玉△9七香成▲同桂△7八角右成▲同銀△7七金 と進む。
ちなみに以下は▲同銀△同歩成▲9九玉△8八銀▲同飛△同と▲同玉△8七銀成▲9九玉△9八飛▲8九玉△8八飛成、等の手順で詰む。もっと早く詰むかもしれないが。

しかし最長の手順で粘ろうとするのは人間だけで、コンピュータにとっては
このような長手数の詰みも、△9五香▲9七桂からあっさり詰むのもなんら変わらないのだ。
確かponanzaは複数の詰み手順が見えたときに、受け方が長い手順を選択するよう調整しているそうなのだが
ツツカナにはそういった機能が恐らくなく、どうせ何やっても詰みだから▲9七桂でも表示させとくよ、としたわけで
▲9七歩とされていたら恐らくちゃんと△8七角を示してくれていたはずであった。

だが森下九段はこれをツツカナのバグと認識してしまった。
これは詰みを0点と表示したツツカナの仕様(?)も影響していたと思う。もし9999だったらさすがにもう少し信用できたのでは、と思う。
結果後手は手を戻して慌てて引き返す。詰みを免れた先手玉も建て直しつつ逆襲に回り形勢は混沌とする。

終盤第2Rはさらなるトラブルが発生。
なんと両者(だったかツツカナだけだったか)、コンピュータが使えない状態になってしまう。
ちょっと具体的にはよくわからないが、タブレット端末上の盤面が初形に戻ってしまい検討不可の状態になってしまった、とのこと。
両者使えなかったのか森下九段だけ使えなかったのか、森下九段だけ使えないことを考慮して
いささかラフプレー(では済まされない)ながら中村六段の方も使えないようにしたのか、そのあたりはいまいち分からない。

相入玉すらうっすらと見えるような乱戦、師匠を思わせる泥沼流の粘りを見せる中村玉であったが
攻めの要の龍を抜かれ中段の森下玉が詰まない形になったことが決め手となり、
左辺を必死で開拓せんとした中村玉がついに掴まり、終局となった。
58手目から森下九段-ツツカナタッグ1手30秒、71手目から両者30秒であったが
事実上は45手目からほぼ両者1手30秒以内での応酬が続き、それが様々なトラブル、ドラマを織り交ぜながら196手まで続く大熱戦であった。


長い序盤戦を抜けた45手目からの戦いは、間違いなくここまでの全対局中ベストバウトである。
(タイムシフトをご覧になる方は、解説が三浦-藤井タッグから高橋-屋敷タッグに変わった瞬間から見ればわかりやすい)
途中森下九段のミスによって形勢は混沌とし、最終盤では両者コンピュータが止まるというアクシデントの中
1手30秒の激戦を自らの力で戦い続け、拮抗した勝負を続けた両者には多くの将棋ファンが惹きつけられたことだろう。

twitterでも少々書いたが、ここまでソフトの強さがこれだけ示されてきていながら
人間の凄さを感じなかった対局など、電王戦関係でただの一つもない。
本局もコンピュータが止まってからこそが人間の凄さが最も発揮され、そしてそこがここまでで最大の見せ場であった。
電王戦の意義を考えるとするなら、それは対局の勝敗もさることながら
コンピュータという異なる存在と戦う、棋士の姿そのものに価値がなければいけない。
電王戦タッグマッチ2014、ここまでやや賛否両論の声はあるものの
電王戦の意義を損なうイベントであったとは私は思わない。
プロ棋士の強さ、勝負に殉ずる人間の美しさを堪能させて頂いた。森下九段-ツツカナタッグには心から拍手を送りたい。

しかしながら、そういったドラマのきっかけは、やはりミスやトラブルがきっかけでないことが望ましい
できることなら両者両タッグがミスらしいミスもなく最善を尽くし、その上で人間の強さが最後に輝くという
去年の決勝のような対局をもう一度見たい、と願っている。
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  1. 2014/09/24(水) 07:07:38|
  2. 将棋
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