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UMEのスパ天における実戦からチョイス、印象に残ったスパーを徹底解説!

観戦記 電王戦FINAL第1局 斎藤慎太郎五段 vs Apery 前編

格闘技ファンにはおなじみ佐藤映像のPVをオープニングに
いよいよやってきた3回目の、最後の団体戦。電王戦FINALが始まった。

先崎九段(確か当時八段)が第3回電王戦の観戦記で述べられていたが、
電王戦が終わると名人戦と、季節の風物詩のように定着してきた感も出てきた。
しかし「団体戦形式の」電王戦は今回が最後となる。

この楽しい時間もあとわずかなのか、と一抹の寂しさも含みながら、
しばらく週末が楽しみで仕方がない幸せな時間がやってきたことに興奮している。


バージョンアップしてメタリックになった「電王手さん」、やたら現代風にセットアップされた二条城の対局場。
ニワンゴ社将棋中継の集大成の電王戦、やはりどこか緊張感が漂う中
読み上げの北村女流に気さくに話し掛ける、全く緊張していない様子の福崎九段がなんだか愉快である。
すでに対局場に入ったApery開発者平岡拓也氏の表情にも緊張感が見て取れる。

満を持しての斉藤五段が登場、外から傘を差して歩いてくると突然なんだかかっちょいいBGMが。
絵になりすぎるくらいイケメンで、しかしそれにしてもあざとすぎる演出になんだか爆笑してしまった。

両者駒を並べ終わり、斉藤五段の先手番で対局が開始された。
注目の初手は▲7六歩。

1-76fu.jpg
電王戦FINAL開幕


△3四歩▲2六歩と進み、作戦の分岐点にもなる可能性のある注目の4手目は、角道を止める△4四歩。
後手のAperyは振り飛車の可能性が高まった。

▲2五歩と伸ばして△3三角と受け、▲4八銀と上がって態度を見る。
当然Aperyの定跡データベースの範囲内だと思うが、ここまでノータイムの応酬が止まり
Aperyが時間を使って考え始める。

定跡の範囲内でもある一定の確率で、自力で考えた最善手を指すことがあるという話もどこかで聞いたが
今回はここでその条件にあてはまったのだろう。
普通は△2二飛車と向かい飛車、あるいは△4二飛車と回って四間飛車にするかである。

COM同士の対戦では、振り飛車はややタブーとされている。明白に勝率が悪いからだ。
出場ソフトを決める「電王トーナメント」では「激指」の敗退が話題になったが、
振り飛車でいくらか星を落としたのが目に見えて響いていた。

しかしながらCOM対人間ではまた少し事情が違って、
電王トーナメントでは一部ソフトが封印していた振り飛車を解禁したとのこと。
これは別に人間の力を侮っているからではなく、大きく作戦負けしないための戦略である。


AWAKE開発者の巨瀬氏は
「相居飛車の将棋だと一つの大きな悪手で決まってしまう恐れがあり、対抗系ならある程度均衡が保たれる」
とその理由を述べており、今回の対局者であるApery開発者の平岡氏も
「対抗系で中終盤の捻り合いが長い将棋になったほうがCOMには有利」という見方のもと
振り飛車を解禁しており、結構出現率は高いらしい。

10分ほど持ち時間を使い、Aperyの着手は△4二飛車。いわゆるノーマル四間飛車である。
プロ間ではほとんど指す人がいなくなった戦型で、その理由は居飛車穴熊の台頭である。


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後手の戦型は四間飛車に


「四間飛車に美濃囲い、駒を捌いて玉型の堅さで勝つ」と従来いわれていた四間飛車という戦法は、
美濃囲いより堅い居飛車穴熊の出現によって非常に勝ちづらくなり、いつしかプロ間では敬遠されるようになった。
居玉のまま穴熊に組まれる前に攻め潰す「藤井システム」なども一時台頭したが、主力にはならず
結局ノーマル四間飛車の勢力回復には至らぬまま今日に至る。

ではこの戦法ならウェルカムかというと、そうではないことを我々将棋ファンは知っている。
第3回電王戦第2局、居飛車穴熊に組んだ佐藤信哉六段に対し、やねうら王がノーマル四間で勝利しているのだ。

この対局で広く知られるようになる以前から、「COMの振り飛車は強い」という評判は常々あった。
しかしがっちり穴熊に組んだプロにCOMが四間飛車で勝つというのはやはりショックが大きく、
四間飛車を敬遠していたプロ棋士達の感覚が間違っていたのか、
はたまたそれだけ手合い違いの力の差があるのか、ということも見直させられるようなインパクトがあった。
(もちろん一局の将棋でそこまで言い切れるものではないが、電王戦の注目度はそれほど高い)


本局も「ノーマル四間には居飛車穴熊で作戦勝ち」としていたプロ棋士達の大局観が正しいのか、という
大きなスケールを背景に据えた戦いに進んでいくことになるかもしれない。

それでも普通にみればありがたい部類の作戦分岐だと思いたいところだが、
カメラが切り替わって映し出されたのは、ぼやきながら頭を抱える斉藤五段の姿であった。

単なるクセのようなものだったのか、何かの誤算があったのかはいまいちわからないところだが
ひとまず指し手は普通、▲6八玉と上がって囲いにいく。
(このあたりを見て、斉藤五段が一番自信のあった戦型・作戦はどのようなものだったか聞きたかったが、局後の記者会見でそれを聞いてくれる記者は残念ながらいなかった)


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さんざんぼやいて玉を上がる。何か誤算があったのだろうか?


後手はまだ作戦的にいくつか含みがある局面。△7二銀として藤井システムにするか、
玉を8筋9筋方面に囲うかが注目だったが、△6二玉として囲いを優先。
お互いまずは囲い合う将棋となりそうである。

15手目、斉藤五段の▲7七角。一般的に持久戦を宣言する手といわれる。
以後先手玉を穴熊に囲うのがメインで、しかし何もなければ▲6八角と引いて2筋の歩を切る狙いもある。

対するAperyは△5二金。穴熊に囲った後に右辺に飛車が振る手が消え、
かつ美濃囲い7一玉型が消えている等、プロから見ると作戦的に狭まり損であるとのこと。

お互い囲いに進み21手目、斉藤五段は▲9八香と上がる。9九に玉が入れば穴熊。
対するAperyは△5四銀と出て勝負の含みを見せる。

▲6六歩や▲6六銀などが考えられ、どちらも有力で且つかなり違った将棋になりそうな局面。
ここで次の一手アンケートなどが行われつつ昼食休憩に入った。

先手から▲6六歩なら囲い合いになり、先手玉は穴熊に、後手玉は美濃囲いか穴熊どちらかというのが一つの焦点になる。
実戦は▲6六銀となり、急戦調・持久戦両方の含みが見られる進行になった。
後手が銀をぶつける手順を選べば戦いが早くなりそう。

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なんとなく戦いが起こりそう


△6四歩に対し▲7八金と仕掛けに備え、△4五歩と突き越した手に対し
▲5七銀と戻れるのが▲7八金と上がった効果で、△7七角成には▲同金として陣形を乱さず構えられる。

そこで後手は△6五銀と繰り出す。「振り飛車には角交換」の格言どおり
先手から▲3三角成△同桂▲2四歩の攻めが見えみえで、
普通に見るとどう考えても先手が得をしそうな局面に。嬉しさと不気味さが半々である。


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この仕掛けは成立しているのか?


局面はその通り進み、▲3三角成△同桂▲2四歩、△同歩▲同飛車に△4六歩と後手から反撃。
しかし後手陣は7二銀と上がる手を保留したデメリットで、6一の金が浮いている。悠々と▲2一飛成と成り込む。


お互い真っ直ぐ進むといかにも先手が得なので、一旦後手が受ける展開が大盤では解説されていたが、
△4四角▲5五角△同角▲同歩という応酬の後、Aperyは△6三歩成と一直線の攻め合いを選ぶ。
▲6一龍は当然で、金を取りながら後手玉に迫る。

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先手かなり優勢に感じる局面だが、習甦の評価値は先手+100程度。とてもそうは見えない。


何もしなければ▲7二金と打って必至(△同銀は▲7一角 △9二玉 ▲7二龍で詰み、△9二玉 ▲7一龍で必至)。
ということで△7二角と受けざるを得ない。

1回▲4三歩△同金と叩きが入って▲6四龍と銀に当てながら引く。
先ほどの△4四角▲5五角△同角▲同歩の応酬も先手にとって得に働いていて、△5四金という決め手が消えている。

仕方なく後手は△5七と、と銀を拾う。▲6五龍と銀を取り返すのがまず見える手で、
一度▲4四歩と叩きを入れるかどうかが若干悩ましいが、銀を取るのが普通の局面か。
斉藤五段がここで長考に入る。

さすがにある程度したら銀を取るだろう、と予想されるところだが
中々指さず、そのまま刻々と時間が過ぎていく。

これはプロにいわせれば危険な兆候で、恐らくすぐ取るのがベストで
ヘタに時間をかけて他の手を読んでしまうと、その後結局6五龍とするなら考えた時間の損だけが残ってしまう。
なのでどうしても他の手を指したくなり、そのために自分にとって都合の良い読みをしてしまいがちだという。

解説の鈴木八段、観戦記担当の先崎九段共にこの意見で一致、特に鈴木八段は
「▲4四歩なら負けると私は思います」とまで語り、心配そうに見つめる。

恐らくここが最大の勝負どころで、恐らく斉藤五段は「早く銀を取っておけば」という後悔も感じていたことだろう。
▲6五龍と銀を取ったら後手から△5六銀と龍に当て、▲6四龍と浮いたのち
△6六歩▲同龍△6五歩▲7七龍がぱっと見える進行で、後手には△2七角成などの追撃もありうるさい。

読んで見たら思っていたほど優勢ではなかった、と感じて▲4四歩を読んで見て、
銀をおとなしく取るのがよさそうとわかっていながらも、読めば読むほど▲4四歩に気持ちが傾いていったのではないだろうか。
斉藤五段は決断を躊躇した後悔や楽をしたい気持ちと必死に戦いながら、我慢の時間を自身の読みと共に過ごす。

そうこうしているうちに1時間近くの時間が経ち、夕休の時間間近となった。
斉藤五段はひとまず自身の時間の損失を受け入れ、夕休に入ってさらに読むという選択肢を選んだ。

46-57to.jpg
頼む、銀を取ってくれ!


後編へ続く。


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  1. 2015/03/15(日) 17:42:27|
  2. 将棋
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